【わたらせ木工店】「月刻」　木製腕時計クオーツムーブメント

月刻（げっこく）
― 小さく光る、夜のかけらを手首に。

時計を着けることを、久しぶりに「楽しい」と思えた。
そんな声を聞きたくて、この一本を仕立てました。

私たちがつくる腕時計「月刻（げっこく）」は、
黒檀という漆黒の木を素材に、静かに、けれど芯のある存在感を持って手首に収まります。
そのサイズは、以前にご紹介した「新月」よりもひとまわり小さめ。
文字盤はやや控えめに、ケース径も少しだけ絞りました。
結果として生まれたのは、時計というよりも「アクセサリー」に近い感覚の一本です。

身につけていることを、ふと忘れてしまうほどの軽やかさ。
でも、ふと目をやると、そこに確かな重みが宿っている。
黒檀の深い色合いと、艶やかに光を受ける肌理（きめ）は、手元を引き締める名脇役。
スーツに合わせても、Tシャツに合わせても、きちんと成立する。
年齢や性別、シーンにとらわれず、自然と馴染むこと。
それが「月刻」のいちばんの個性かもしれません。

なぜ小さくしたのか
最近の時計は、大きくて重たいものが多い。
それはそれで魅力ですが、もっと気軽に、もっと“今日の気分”で着けられるものを作りたかった。
だから私たちは、機械式の「新月」の重厚さとは別の道を選びました。
“黒檀の時計”という品格はそのままに、よりラフに、自由に、日常に寄り添えるように。
それが「月刻」のコンセプトです。

ムーブメントには、日本製の信頼あるクォーツを採用。
時間のズレはほぼゼロ。電池交換だけで長く使えます。
毎朝の手巻きの儀式こそありませんが、
その代わり、気軽に着けて、気軽に時間と出会う楽しさがあります。

黒檀という素材について
「黒檀（こくたん）」という木は、扱うのに時間がかかります。
堅牢で、削りにくく、加工時の刃当たりも他の木とはまるで違う。
しかし、その手間の先にしか現れない艶と肌触りがある。
磨けば磨くほど、まるで陶器のような光沢を放ちます。
色は真っ黒というよりも、深い紫を帯びた墨色。
天然ゆえに一本一本表情が違うのも魅力のひとつです。

時計という形に落とし込むときにも、
硬さゆえに非常に精度が求められます。
コンマ数ミリのズレが命取りになる世界。
それでも黒檀を選んだのは、やはり“素材がすべてを語る”からです。

触れたときの冷たさ、光の吸収率、音の響き。
それらすべてが「ただの木じゃない」という説得力を持って、手元に残ります。

名は「月刻（げっこく）」
夜の時間を、ゆっくりと、丁寧に刻む道具。
それがこの時計の正体です。
名前の由来は、夜空に浮かぶ月が、静かに時を運んでくることから。

昼間の喧騒に紛れても、月は変わらず浮かんでいる。
同じように、「月刻」もまた、あなたの一日を静かに見守る存在であってほしい。
忙しさの中でも、ふと手首に目をやることで、少しだけ肩の力が抜けるように。

“着けこなす”のではなく、“馴染ませる”時計
この時計には、大げさな機能はありません。
スマートでもなければ、通知も測定もしません。
あるのは、正確な時間と、手触り、素材の力。
けれどそれこそが、日々の暮らしに必要な要素だと思うのです。

服に合わせてもいい。
部屋のインテリアのように選んでもいい。
木のぬくもりを感じたいとき、あるいは何か大切なことを思い出したいとき、
手元にこの「月刻」があれば、それだけで少し前向きになれる。
そんな存在でありたいと願っています。

仕様
商品名：月刻（げっこく）

素材：黒檀（文字盤・フレーム・バンドすべて）

ムーブメント：日本製クォーツ（電池式）

ケース直径：約35mm（新月よりひと回り小型）

バンド幅：約18mm（調整可）

重量：軽め〜中程度（黒檀としては軽量設計）

表面仕上げ：オイルフィニッシュ（自然系オイル使用）

バンド交換：専用工具で交換可（交換バンド別売予定）

防水性能：日常生活防水レベル（手洗い程度まで）

製作：わたらせ木工店（群馬県みどり市）